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肝臓の知識

肝臓Q&A

Q.肝臓とはどのような臓器ですか?
人体における巨大な生化学工場と呼ばれる臓器です。肝臓は大人の男性では1キロを超える巨大な臓器で、2500億~3000億個もの肝細胞から成り立っています。 肝臓には門脈、肝動脈、肝静脈などが出入りしています。門脈は胃、腸、脾臓から肝臓に入ってくる静脈で、肝臓に流れ込んでいる血液の80パーセントは門脈から来ています。腸で吸収された栄養分のなかで脂肪以外のものは門脈から肝臓へ運ばれます。肝動脈は心臓から出ている大動脈から枝分かれした動脈で、肝臓が有害物質と戦うための酸素を供給しています。肝静脈は肝臓内の血液を集めて下大静脈に送る静脈です。肝臓では2000種以上の酵素がそれぞれの仕事を受け持ち、1万種以上の化学反応を行っています。これらのことから、肝臓が巨大な生化学工場と呼ばれる所以です。
Q.肝臓の機能にはどのようなものがありますか?
グルコースなどの糖代謝、アルブミンやプロトロンビンなどタンパクを作るタンパク代謝、コレステロールを合成する脂肪代謝機能があります。またビタミンA、D、Kなどの脂溶性ビタミンを貯えられます。そして、体内外の有害物質を解毒・排出する重要な働きがあります。
Q.肝臓が機能しなくなるとどうなりますか?
肝臓が機能しなくなった状態を肝不全といいます。肝不全になると、代謝や解毒など肝臓の役割を果たせなくなります。しかし、肝臓の実質臓器が20~30%残っていれば、生体に必要な要素は最低限まかなうことができます。ですので、少しぐらい切除しても充分に肝臓としての機能を果たすことができます。肝臓はそれだけ予備能が大きい組織と言えます。
Q.肝臓が機能しなくなる原因は何ですか?
肝臓には肝細胞や肝内胆管細胞などいろいろな細胞がありますが、その中で一番多いのが肝細胞です。この肝細胞が機能しなくなる原因で一番多いのがウイルスです。ウイルスが肝細胞に入り込むと生体はそれを異物と認識して、ただちにウイルスを除去しようとします。そのときに強烈な免疫反応が起こり、肝細胞が障害を受けるため正常に機能することができなくなります。ウイルス以外の原因としては血液障害やアルコール性肝障害などが原因になります。
Q.肝臓がんの原因は何ですか?
肝臓がんには、肝細胞がん、肝内胆管がん、転移性肝がんなどがあります。原発性肝細胞がんの原因として関係が深いのは肝炎ウイルス(B型・C型)と考えられています。が、たとえこれらのウイルスに感染しても、肝炎が慢性化しなければ肝がんにならなくて済みます。B型肝炎ウイルス(HBV)は、母子感染など、免疫不全の状態で感染すると慢性化しますが成人に感染しても慢性化しません。これに対してC型肝炎ウイルス(HCV)は、成人に感染しても50~80%が慢性化するといわれています。しかも、いつの間にか慢性肝炎や肝硬変に進展している場合が多いので注意が必要です。
Q.肝硬変と肝臓がんはどう違うのですか?
肝臓が破壊されて、それが再生しようとするときに線維化が起こり、肝機能を阻害する再生結節の集合体になりますが、その状態を「肝硬変」といいます。そして破壊された肝臓がもとの状態に戻ろうとするときに正常に戻れない細胞が肝臓がんです。肝臓がんの80パーセントは肝硬変を合併しています。ですので、肝硬変が長期化すれば高い確率で肝臓がんになります。

肝硬変と肝臓がんの違い

肝炎ウイルス

肝炎ウイルスに感染すると多くは「肝炎」という病気になります。その症状としては、全身倦怠(けんたい)感、食欲不振、尿の濃染(尿の色が紅茶のように濃くなる)、さらには黄疸などがあります。しかし、自覚的には何の兆候もなく、自然に治癒することもあります。また、肝炎ウイルスが身体に侵入しても、「肝炎」という病気にならず、健康な人体と共存共栄し、「ヒトは何らの身体的被害を受けず、肝炎ウイルスもヒトの身体から駆逐されず体内にとどまる」という状況もあります。このように、体内に肝炎ウイルスを持っていても健康な人のことを肝炎の「キャリア」といいます。肝炎ウイルスの感染経路としては次のようなものがあります。

1)妊娠・分娩による感染

妊娠・分娩を介して「肝炎ウイルスを持った母親」から子供へという感染経路があり、これを垂直感染といいます。この垂直感染は、主にB型肝炎に多く認められ、同一家族・家系に何人もの肝炎ウイルス感染者が存在することがあり、これを肝炎の「家族集積」といいます。現在では、B型、C型の肝炎ウイルスは検出可能で、妊娠中の母親は血液検査で肝炎ウイルスの有無が必ず調べられます。母親がB型ウイルスの保菌者と判明すると、垂直感染を防止するために、新生児には直ちにワクチン治療が行われ、B型肝炎の発病を防止する措置がとられています。

2)血液製剤の注射による感染

肝炎ウイルスを含んだ血液の輸血を受けると、輸血を受けた人の身体に肝炎ウイルスが侵入してしまいます。 輸血が必要な場合は、病気・けがなどで身体の抵抗力が低下していることが多く、肝炎が高率に発症します。 「輸血」にはいろいろな製剤がありますが、血液中の赤血球・血小板だけでなく、上澄み部分(血漿)などの「ある成分」だけを注射しても、肝炎ウイルスに感染する可能性があります。 現在は、輸血に用いる血液はすべて厳重な品質管理が行われており、特にB型、C型についてはウイルスの有無を検査して、ウイルスの存在する血液は輸血には使わないという体制が確立しています。 そのため、現在では輸血による肝炎は激減しています。ただし、B型にもC型にも検査で見つけられない場合がわずかながらあることも事実で、輸血による肝炎が完全にゼロになったわけではありません。 輸血は生命を救う唯一の治療である場合も多々ありますので、輸血をしなければならないこともありますが、「どうしても必要な輸血」以外は慎むべきですし、この考え方は広く医師に定着してきています。

3)性行為による感染

性行為もウイルス感染の経路となる可能性があります。しかし、B型肝炎やC型肝炎の夫婦間感染率は低く、通常の性行為では感染する危険性は低いことが報告されています。ただし、B型肝炎にはHBe抗原が陽性の場合は感染力が強いので、専門医に相談することをお勧めします。

4)針刺し行為による感染

これは、医師・看護師などの医療従事者が、採血時や検査・処置・手術中などに肝炎ウイルスを持つ人の血液がついた針を誤って自分の皮膚に刺すなどの針刺し事故や、集団予防接種での針の再利用、入れ墨・針灸治療などに使った針の使いまわし、麻薬注射のまわし打ちなどで起こる感染のことです。事実、入れ墨を入れた方や、麻薬常習者では肝炎ウイルス感染が高率に認められています。しかし、集団予防接種での感染の問題は、現在では使い捨て注射針を用いていますので、心配ありません。

以上、肝炎ウイルスの感染ルートについて、現在わかっているものについて解説しました。しかし、1)~4)の感染ルートのどれにも思いあたるものがないという場合も多く、「このルートだ」と断定することは必ずしも容易ではありません。したがって、肝炎ウイルスの感染は個人の意識・知識によりある程度予防できますが、防止できない部分があることも事実です。肝炎ウイルスに感染してしまったら、即、肝がんになり、生命が脅かされるわけではありませんが、「肝がんの高危険群」と考えて対処すべきです。 肝炎ウイルスに感染していることが判明するのは、

  • 1)身体に変調をきたし、医師を受診してウイルス性肝炎と診断される
  • 2)職場や居住地域の健康診断の血液検査で発見される
  • 3)献血をした際に血液が輸血に適するか否かの検査で後日連絡を受ける
  • 4)他の病気で医師を受診して手術や検査を受ける必要が生じた際の血液検査で判明する

などの場合があります。 また、家族の一員が肝炎ウイルスに感染していることが判明すると、「家族集積」性を考慮して家族の他のメンバーの血液検査を勧めます。 肝炎ウイルスに感染していることが判明したら、次には「キャリア」であるのか「肝炎」という病気になっているのかを調べる血液検査が必要です。
しかし、ともに肝がんにかかりやすい候補者と心得るべきで、「肝がんの高危険群」といいます。
高危険群の人に肝がんを発生させないような予防法についても、研究が進んでいます。現段階では、C型肝炎に対して期待されている治療は、インターフェロンフリーによる治療です。インターフェロンフリー治療により発がんのリスクを軽減できたとの報告も幾つかあります。 また、最近では新薬の登場により従来より治療効果が高まっております。しかし、いずれもまだ十分な決め手となっていないのが現状ですので、高危険群者は肝がんにかかっても手遅れにならないうちに早期発見・治療することが必要です。 感染以外の肝がんのリスク要因としては、大量飲酒と喫煙などがあります。ほかに、糖尿病患者でリスクが高いなどの研究報告があります。

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